さてThinkPad L390の熱暴走を防止する方法に関しては別記事を作成しましたが、頭の痛いことが判明しました。
予想に反してLenovo ThinkPad L390は、単純な底面冷却では済みそうにありません。
今回はThinkPad L390の冷却機構と、さらなる対策案の検討をすることにします。
ThinkPad L390の冷却機構
冷却機構を把握するに当たっては、Macbook Air 2011 13インチと比較すると理解が進みそうです。
これがThinkPad L390の内部構造です。遥か昔を思い出してみると、IBM ThinkPad X21と似たような設計になっています。
ThinkPad L390ユーザは裏返してみると分かりますけれども、下水道の金網のような給気口が存在します。場所的には青色の枠で囲った辺りです。
その青色の中に配置された円形の部品が冷却ファンです。つまりIBMの場合は筐体の各所から吸気するのではなく、この冷却ファンの上にある吸気スリットから冷却用の空気を吸入します。
そしてオレンジ色で示した部分にあるオレンジ色の棒がヒートパイプです。棒の先の方は、四角いチップに貼り付けられています。この四角い部品がCPU(またはMPU: Main Processing Unit)です。
冷却ファンは赤色の矢印の方向に、吸気した空気を排出します。この時にヒートパイプが空気で冷却され、その冷却がCPUに伝わっていくという訳です。
実際に吸気スリットのみを利用しているのかは実機検証してみないと分かりませんけど、普通は吸気スリットのみでしょう。だとすると、IBMらしいというか、いかにもビジネス専用の設計仕様です。
そうやってThinkPad X21を思い出してみると、あのノートパソコンも底面発熱は酷くなかったです。てっきり「さすがはIBMだ」と感心していました。
一方でMacbook Proなどは、最近の機種でも底面発熱が酷いというユーザが多いです。それで私のアルミニウム製の冷却台 “静冷台” や、デスクトップPCでも使われる大型ファンで冷却する “ノートパソコン底面冷却ツール” が現在でも評判です。
ちなみに薄型ノートパソコンであるMacbook Airは、底面発熱が少ないことで知られています。冒頭画像のMacbook Air 2011を見ると、その理由が分かって来ます。
Macbook Airはアルミニウム一体型の筐体であり、銀色の筐体だと無粋に見える吸気スリットが見当たりません。実は吸気スリットは背面全体に設置されています。
Macbook Airは性能を犠牲にして薄さやデザインを重視しており、廃棄スリットも分かりにくいように配置されているのです。おまけに背面全体なので、NICやGPUなども経由して冷却ファンに吸収されます。
これは言い換えると、Macbook Airはビデオ会議で重要となる周辺機器も冷却対象にしているということです。そして最後はThinkPad L390と同じく、ヒートパイプを経由してMacbook Air外部へ排気されています。
おまけにMacbookやMacbook Airはアルミニウム筐体なので、熱伝導が起こりやすいです。だから底面を利用して廃熱しやすいです。一方でThinkPadは昔から底面にはマグネシウム合金を使うことが多いです。熱伝導率はアルミニウムと比べると低いです。
つまりIBMは吸入した外気の殆ど全てをCPU冷却に当て、他の周辺機器は重要な冷却対象とは考えていないのです。これが完璧を追求するAppleなのに「熱くなる筐体」と、「気持ち良く業務に専念できるThinkPad」という相違に繋がって行くのです。
たしかにビジネス用途だとMicrosoft Officeなどが多用されるので、CPU重視という設計思想は納得できます。ただし昨今のように内蔵マイク/スピーカー/無線LAN/GPUなどを緻密に制御する状況では、制御プログラムは複雑になるし、発熱問題のリスクも高まって来る訳です。
さらなる対策案
さて以上のような状況を踏まえると、ビデオ会議ソフトウェアの安定稼働に向けて、さらに幾つか感がるのが良さそうな項目が浮かび上がって来ます。
基本的な発想としては、「なるべく複雑な制御をさせないように、ThinkPadにはビデオ会議だけに専念して貰う」と、「発熱するデバイスは使わないようにする」です。
もちろんWindows 10の設定は、別記事のようにパフォーマンス優先にして、バックグラウンドアプリケーションを停止させる設定が望ましいです。
なお電力パフォーマンスに関しては、CPUを100%から引き下げる必要はありません。ビデオ会議ソフトウェアの場合、CPU使用率は高くありません。
(だからこそ、ThinkPad L390には向かないと言えるかもしれません)
Bluetoothは使わない
Blutooth用の通信チップが動作していると、そのための制御は必要になるし、発熱も生じます。特に必要なければ、Bluetoohはオフに設定します。
無線LANは使わない
無理にとは言いませんけれども、無線LAN用チップもBluetoothと同じく、制御が必要です。発熱も生じます。どうしようもないほどトラブルが続く場合は、USB経由での有線LANを考えると良いでしょう。
画面の解像度を落としてみる
外付けディスプレイを使用している場合は、本体のみを利用するようにします。また画素数は変わらないですけれども、解像度を下げてGPU負荷を下げる試みをしてみても良いでしょう。
Webブラウザで使用しないタブは閉じる
Webブラウザは表示高速化のためにハードウェアアクセラレータを活用するデフォルト設定になっています。いちいちオフにするのも面倒でしょうから、まずは必要のないタブを閉じると良いでしょう。
(タブに残っている限り、表示していなくてもWebブラウザ側で「いつでも表示できるように」とデータ収集&表示準備をやっています)
パッと思いつくのは、まずは以上のようなところでしょうか。なおビデオ会議ソフトウェアを使用開始してから一定時間すると不具合が多発するタイミングを考えると、やはり根本的な原因は「発熱」ということになるでしょう。
問題は発熱によって変化した周辺機器環境に、ハードウェア制御プログラムが対応しきれないということです。単なるCPUの熱暴走であれば、普通は強制電源オフまで必要にはならないような気がします。
ともかくThinkPad L390を捨てる訳には行きませんし、いずれ世の中も落ち着いて、ビデオ会議ソフトウェアの出番も減って行くことでしょう。まずは「シンプル・イズ・ベスト」で、なんとか乗り切るのが良さそうです。
まとめ
以上がThinkPad L390でビデオ会議ソフトウェアによるトラブル発生を予防するための原因考察と追加対策案です。
もちろんThinkPad L390が内部冷却を意識していないといっても、底面冷却が全く役立たないということは無さそうです。先の記事の通り、やっておく価値はあります。
それにしてもビジネス向けにCPU中心の設計をしていることが裏目に出ている可能性があるとは、なかなかITテクノロジーの世界も奥が深いです。
ともかく以上の施策により、少しでも快適にThinkPad L390が利用できるようになると嬉しいです。
いろいろ書きましたけれども、私もThinkPadにはお世話になりました。某有名アニメのように、「あれは良いものだ」で記事を終わらせて頂きたいと思います。
それでは今回は、この辺で。ではまた。
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記事作成:よつばせい